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授業終了のご報告

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こんにちは。皆様いつも放置気味なブログに足を運んでいただきありがとうございます!

先日2月の13日の自由登校日を持ちまして、全過程を無事に終了することが出来ました。

僕の学んでいたコースは3年制で、クロノグラフを専攻する(ウォッチメーカーマスターコース)というコースになります。このコースは卒業前に、マスター認定試験と呼ばれる試験を開催します。
試験内容は
ETA7751のオーバーホール
ETA955のオーバーホール
I記試験
の3つです。筆記2時間、実技10時間の二日間の試験になります。
時計には不具合がつけられており、それらを決められた時間内で如何に修理できるかがポイントになります。(具体的にはひげゼンマイの外端カーブ、爪石の停止量、各部のアガキなどを10箇所程度狂わせてあります。)

各科目70点以上で合格し、1位の学生には何とHORIAの穴石調整器をプレゼント!!
という非常に太っ腹な試験でした。

結果は、1位と2位のデッドヒートだったようです。
僕はと言いますと、合計得点272点!!で惜しくも2位。2点差でHORIAを逃してしまいました(T_T)
全力で努力したつもりですが、1位の人に得意分野の筆記で11点差をつけられてしまった為、敢え無く敗退・・という結果でした。
常々一方的にライバル視していた友人に、最後に負けたのは悔しくもあり、しかしながら実力で見ると彼に部があったのは事実です。(先生より学内一の腕と言われていました)
そんな彼に僅差だった事、むしろ実技では9点勝ったという事を嬉しくも思います。

こういった形で戦う事は今後ありませんが、これからも良きライバルとして意識しあえていければと考えています。

4月からは某スイスメーカーの国内拠点で修理を一から学びます。
環境的に温い部分もあるため、覇気を失う事無く日々精進したいと思っています。
今後とも応援よろしくお願いします!

考察 ランデロンのクロノグラフ「cal.51」について

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こんにちは。久々の更新です。
通勤時間が往復4時間もあるので、ネタはちょこちょこ上がってます(笑)
ボチボチ更新していきますのでよろしくお願いします。

先日無銘のスイス製手巻きクロノを入手しました。
年代は1940年代と古いですが、珍しくスクリューバックで耐震装置もあり、実用性はバッチリです。
搭載されているムーブメントはランデロンの51という機械です。ランデロン社はエボーシュSAの廉価クロノを生産していたメーカーで、フォンテンメロンの支社ということです。
市場では安物と言われ低く見られていますが、実際の所はどうなのでしょうか。いままで僕が扱ってきたスイス製クロノグラフ(Lemania1873、Valjoux7750、Valjoux7733)と比較してみました。

1.ベースムーブメントの比較
ランデロン51
手巻き/18000振動/チラテンプ/スチールヒゲ
微動緩急なし/耐震装置あり
*チラテンプを採用しクラシカルなデザインだが、鉄ヒゲ+微動緩急の無いテンプに加え、アンクル停止量も大きいため脱進機のスペックは現行品と比べてしまうと今ひとつ。
ただし香箱がムーブメントからはみ出るほど大きく、ぜんまいトルクが大きいためテンプの振りは良好で姿勢差も実用に堪えるレベルだった。
また後期モデルには耐震装置を採用。華奢なアンクルとクリアサファイアの爪石はアンティークならではの美しさ。耐震受石の内側に拡散防止の切れ込みが入ってる所も古い時計ならではの特徴で、手が込んでいる。
スチールひげに加えてテンプも温度補正機能のない通常品であるため温度変化には弱い。
人気が無く安価なので新品の部品供給は無くともジャンクからの部品回収で維持できると推測。
☆精度=C

オメガ861
手巻き/18000振動/スムーステンプ/ニヴァロックスヒゲ
微動緩急あり/耐震装置あり
*基本設計は321からの古いもので、低振動ではあるが恒弾性ヒゲの採用、微動緩急機構などで十分な精度が出せる。
2レジスターモデルとの部品共通化が図られた汎用性の高いムーブメント。現行品ではあるが部品価格が高く、ランニングコストが高くつくのが難点。
スムーステンプのためデザインは今ひとつで、赤銅メッキ+チラテンプ採用の前身モデル321と比べると見劣り感は否めない。
☆精度=A

7750
自動巻/28800振動/スムーステンプ/ニヴァロックスヒゲ
微動緩急あり/耐震装置あり
*8振動と大トルクのゼンマイ、エタクロン機構の採用(アオリの微調整機構)、恒弾性ひげ、ベリリウム合金テンプの採用でクロノメーター級の精度も容易に出せる。モジュール付加によりいろいろな機能を追加したり、レイアウトを変更できる汎用性の高い優れたムーブメント。大量に流通しており部品の入手も容易。工業製品として非常に優れている。ブリッジは一体型でデザインは美しいとは言い難い。
☆精度=S

ロシア版7733コピー
手巻/21600振動/スムーステンプ/ニヴァロックス?ヒゲ
微動緩急なし/耐震装置あり
ヴィーナスの廉価版188をさらにコストダウンさせる目的で開発された7733のさらにコピー品。金型はヴァルジュー社からの払い下げとの噂だが、仕上げ、品質ともに良好とは言い難い。得に酷いのはシムを用いたテンプのアガキ調整。
通常テンプの縦アガキは穴石調整器を用いて耐震装置の高さを変えて行うべきであるが、この機械は薄いプレート(シム)をテンプ受けの下に数枚挟むことで高さをコントロールしている。また耐震装置はロシアオリジナルで、部品を紛失するとスイス製品は流用できない。
各部の調整もいまひとつで、固体によっては姿勢差が大きく出てしまい、調整できないものも(アオリをいくら詰めても平縦の平均歩度の差が20秒以上あったりする=脱進機誤差が非常に大きい)。
☆精度=E

2.クロノグラフ部分の比較

ランデロン51
カム方式/キャリングアーム採用/スライディングギア採用
*安物と言われるランデロンではあるが、キャリングアームとスライディングギア(独立していてリセット時等に稼動するクロノ中間車)を採用した本格的な構造。51はランデロンの中ではハイグレードなモデルらしく、線ばねの採用はわずか2箇所に留まり、ほとんどの部品が板材削りだしバネを使用。クロノブリッジはベーシックな形状で美しい。ハンマーもランデロン48系やヴィーナス188などの厳ついデザイン(仲間内ではイカと呼んでます)とは異なり、普通の形状のハンマーがカムの上に直接取り付けられている。カム式ランデロンの中では一番カッコいいハンマー。ハンマースプリングを持たない構造によりプッシュボタンの操作が比較的軽いため、カム式ながら操作感は軽快。マイナスポイントとしては操作が通常のクロノグラフとは異なる点(上ボタンがスタート、下がストップ&リセット)、ストップ時にクロノ輪列を止めておくブレーキ機構が無い点、ハンマーの下に入るので目立たないがカムの形状、一部レバー類が削り出しではあるがイマイチ安っぽい点が挙げられる。
☆機能=C 外観=B 操作感=B

オメガ861
カム方式/CA採用/スライディングギア不採用
*申し分ない構造。カム回りもピラー式の321からの進化のため、すっきりとして美しいカム形状をしている。キャリングアームやレバー類は流石しっかりとした作りをしている。
難点は以下。
スライディングギアがなく、クロノ中間車はブリッジの下に隠れてしまっている。おかげでクロノブリッジの形状もなんだか野暮ったい。
スタート時にはジャンパーで規正されたリセットハンマーを押し戻すため強い力が必要となり、クリック感はやや強い。
ねじの種類がやたらと多い。
ブレーキ機構もついているが、プラスティック製でデザイン面ではマイナスである(シースルー用に金属製もあり)。
☆機能=A 外観=B 操作感=B

7750
カム方式/スイングピニオン/スライディングギア不採用
*低コストなスイングピニオン方式を採用。針飛びも少なく確実で安定した動作をする。難点を挙げると主にデザイン面である。ミニッツジャンパーやフィンガー、クラッチスプリング等多くのパーツに安価なバネを使っている所が悲しい。またブリッジは直線的で、カム形状も味気ない。機構面では巻き上げ機構に不具合を起こすものが多く、切替車や角穴駆動車の破損が度々見られる。ローターが重いため、ベアリングも衝撃等によりダメージを受けやすい。
クロノスタート時に非常に固いハンマースプリングを持ち上げなくてはならず、また12時間積算計のリセットもプッシャーを押す力に依存しており(調整は可能だが)、操作感はいまひとつ。
☆機能=A 外観=D 操作感=C

7733コピー
カム方式/CA採用/スライディングギア採用
*後期のカム方式クロノグラフに見られる、カムと一体化したハンマー(イカ)のデザインが強烈。個人的には美しいという評価は出来ない。
また、175ベースとはいえ当時の面影を残す部品はほとんど無く、ブリッジは直線的で味気ない。
スライディングギアを採用しているのだが、スライディングギア自体のつくりが安っぽい。
キャリングアームは上下とも受け石を採用した高級品。
本家7733とは仕上げの美しさが異なる。廉価品とは言え7733もブリッジの仕上げは施されているが、中国やロシアの時計は削りっぱなしの上からロジウムめっきをかけており、瞬間に安っぽさが伝わってしまう。なぜか操作感も本物とは違い、非常に硬い印象を受ける。
☆機能=B 外観=D 操作感=C



まとめ・・・
主観的な考察ではありますが、ランデロンは名機1873には及ばずとも、実用もでき、絵的にも[見れる]ムーブメントであると結論づけます。
僕のランデロンは裏ブタを手締めしていて、いつでもムーブメントを眺めることが出来る仕様にしています(笑)
操作感もそこそこ気持ち良く、オーバーホールした直後の精度も日差+5秒と非常に良い結果を出しており、一年間断続的に使用しましたが、現状+10秒程度かと思われます。)

競合するカム式オールドクロノであるValjoux92やVenus140(線バネ多数+スイングピニオン方式で見栄えがイマイチ)、Venus188やValjoux7733(カム一体型のハンマーが異常に大きい&ブリッジが簡略化されて直線的)と比べると、ブランド名でこそ劣りますが、デザインやコストパフォーマンスを考慮すると十二分に良好なムーブメントと言えるでしょう。
また、手巻きクロノというジャンルは自動巻きクロノとは優劣のポイントが全く事なり、同じクロノグラフというくくりではありますが、方向性は全く異なる事が興味深いです。

ピラー式のムーブメントになると価格が一気に跳ね上がるため、カム式で手巻きクロノを探している方は一つぐらい持っていても良いかも知れません。
話は逸れますが、チャイナのVenus175コピー品、見た目はともかく操作性、精度は非常に高く、これも一本コレクションに入れても良いかと思います。追々購入して分解し、構造、調整レポートをお送りしようかと考えていますので気長にお待ちください。

長くなってしまいましたが、今日はこんな所で。

復活!天文台コンクール

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こんばんは。

またまた久しぶりの更新でスイマセン。

さて、今日は今号のクロノス日本語版からのピックアップです。
なんと今年、天文台コンクールと呼ばれる伝説の時計コンペディションが復活しました!!

時計ファンの皆様でしたらご存知のこととは思いますが、天文台コンクールと言うのは、平たく言いますと時計の精度を競う競争です。1945年からメーカーの威信を賭けた戦いが繰り返されていましたが、1975年のコンクールを最後に中止されてしまいました。
理由はクォーツ腕時計の誕生による精度競争の終焉、日本のメーカーによる上位独占が主な原因ではないかといわれていますが他にも色々な事情があったのかも知れません。
今回の復活は、ある時計博物館の50周年を記念するイベントとして開催されるもので、各メーカーのスーパーマシンが投入され、その精度を競い合います。


僕が個人的に好きなJL社も今回の大会に参加します。
流石といいますか、今大会にもマニア垂涎の超絶マシンを投入してきました。
ひとつ目はトゥールビヨン。トゥールビヨンについての詳しい説明は不要かと思いますが、従来のトゥールビヨンは、姿勢差を解消するために搭載された「キャリッジ」の駆動にぜんまいのトルクを多く取られてしまうため、実際のところその精度は通常の時計に劣るものとされています。
実際、かつての天文台コンクールでもトゥールビヨンが上位にランクインする事はほとんど無かったようです。
しかしJLはトゥールビヨンに最先端素材・技術を投入し、超軽量キャリッジを採用。テンワ直径も通常の比ではない大径テンワを採用し、お飾りのトゥールビヨンではなく、精度追求のための機構として、トゥールビヨンが本来あるべき姿を追求しました。

そして二つ目がこれまたトゥールビヨンなんですが、これは所謂3次元トゥールビヨンで、大型テンプ・軽量キャリッジ採用はもちろんのこと、キャリッジの回転速度の適正化に加え、平置きのデテント脱進機などに搭載される「ちょうちんヒゲ」と呼ばれる等時性に優れたヒゲぜんまいを搭載しました。
このヒゲは、高精度の腕時計に採用されている「ブレゲの巻き上げヒゲ」と同じく、ヒゲの収縮運動を綺麗な真円に近付けるためのものですが、何重にもヒゲを巻き上げるため、縦方向に大きくスペースを確保する必要があり、通常の腕時計には用いられていませんでした。
平置きデテントでは抜群の性能を誇るようですが、何しろ腕時計では前代未聞の挑戦です。
どのような精度が出るのか非常に楽しみな一台です。

余談ではありますが、今回のコンクールに投入されるトゥールビヨンのベース機は、ポインターデイト・セカンドタイムゾーン表示機能付で693万円と非常に良心的な価格設定です。
まぁ、もちろん買えませんけどね(笑)


三大ブランドとして超有名なAP社も今回の大会に参加します。
こちらも投入された時計はただ事ではすみません。
テンプ拘束角が小さく、精度に優れたデテント脱進機という機構がありまして、古くから海洋時計にはよく用いられてきました。デテントは精度には優れるのですが(月差レベルの精度)、振動に弱いため腕時計に用いられることはありませんでした。
APがデテント脱進機をベースに耐衝撃性を向上させて開発した「AP脱進機」。市販のAP脱進機搭載機に大改造を施したマシンが今回のコンペに参戦します。
耐衝撃性を考慮し振動数は12振動、ヒゲぜんまいの収縮を限りなく均等にしようと2枚の相反するヒゲぜんまいを搭載!聞いているだけで驚愕のスペックです。
ちなみにこちら、ベースウォッチのお値段は約2800万円也。僕の年収何年分なんでしょうねぇ(笑)


まさに「天文台コンクールは時計界のF1」とは言ったもので、上記の他にも、予算度外視の色々なメーカーの非常に興味深い時計たちが並びます。
詳しくは今号のクロノスを買ってご覧ください!!

ETA7750のはなし

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非常にどうでも良い話なんですけど、以前友人に買い取ってもらったジャンク上がりのスピードマスター(トリプルカレンダー ETA7750ベースの7751搭載)が調子悪くなってしまいまして、先週以前のバイト先にお邪魔して、オーバーホールを行いました。

原因は爪石の欠落と、アンクルホゾの汚れによる振り落ちだったんですが、クロノを動かすと止まっちゃうほどに弱ってまして・・
オーバーホール後は振り角が180度から290度と大幅に改善!!新品レベルの元気な時計になりました!いやーホントに精度も振りも出やすい良い機械です。

友人の機械はかなり古いものでして、結構現行型と違う部品があったので、メモ程度の話ではありますが、新旧の比較にでもしてもらえたらと思います。

�輪列
・3番車の軸受けが地板側だけメタルブッシュ。
トルクが大きい機械ゆえ、ブッシュの摩耗が激しく、なぜここにメタルブッシュが採用されたのか疑問に思った。
今回の修理の際に、部品取りの機械から移植してルビーの受石に変更。ザラ回りがスムーズになった。

�クロノパーツ
・30分積算計の軸受けもメタル。あまり大きな力はかからないので摩耗もなく、そのまま使用した。
・裏輪列側の12時間カウンターのブレーキパーツの先端形状が現行と旧型で違うらしい。部品がなかったのでここはそのまま再使用。次回オーバーホール時に交換予定。

�その他
・エボーシュの刻印が「ETA」ではなく「VAL」だった。valjoux時代の名残ですね。
・アンクル爪石が不透明。今回は欠けていたため現行品の爪石に変更した。
・自動巻きの切替車の上下ホゾもメタル。摩耗が起きやすい部位だが、巻き上げは正常だったため今回はそのまま使用。次回要交換か??
・ETA特有のアオリ調整システム(ETAクロン)が実装されていない。等時性の調整が若干手間。

他にも探せばいろんな変更があるかもしれません、
30年以上使われている機械ですので、少しずつ進化してメンテナンス性を向上させてるみたいですね。
ホントにメモみたいな話で申し訳ないです(汗)
中古の7750を買うときのチェックポイントとして利用してもらえれば幸いです。
まぁ、古いからといって全然問題があるわけではないので、あくまで参考程度に。

近況

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久しぶりの更新です。
こんなブログにもちょくちょくコメントをくださる方がいらっしゃるので、たまには更新しなくては!
と思いまして(笑)


僕は業界内では「分業」で有名な、とあるブランドで働いています。
分業なので、自分が請け負う部分についての知識や技術は深まるのですが、他の部分が全くのびておらず、その点では学生時代の同級生にみるみる差を付けられているのではないかと思います。

憧れの「1個修理」になれるまでの道程はまだまだ当分長いようです(TT)

ですが、僕も腐っちゃいませんよ!
時計専門誌を読んで最近の事も勉強し、友人からオーバーホールの依頼を受けては、プライベートでもオーバーホールを行なっています。
(自宅にもある程度の工具や測定器は揃えてますが、どうにも出来ない部分は学生時代にお世話になった時計店の大先輩に助けてもらっています…)
とは言え、仕事終わりや手空きの週末などにしか行えないので、せいぜい数ヶ月に1本ってところです。
こんな調子ではマズいな~とは思うのですが、何もしないよりはマシかと。
ノルマが無いため、ゆっくり時間をかけて、丁寧に整備が出来るので気楽と言えば気楽なのかも知れません。

この写真の時計は最近直した、ロンジンの6651?というキャリバーです。
秒カナ式両方向自動巻の時計で、時計学校時代のジュエリー科の友人のお父様のものです。
自動巻機構の油の劣化が原因で、巻き上げが重くなってしまっていたようです。

かなり大掛かりな自動巻機構を搭載していましたが、8振動で最大姿勢差も10秒以内、微動緩急機構を備えた良く出来た構造の時計でした。

カレンダー機構がなかなかの曲者でして、デイトジャスト機構を搭載しているのですが、位置決め用のバネの強度と、日送り爪のバネの強度のバランスが悪いと、ちゃんとカレンダー機構が動かないんです。注油もシビアで、なかなかてこずりました。

カレンダーも曲者でしたが、この時計を触るときに最も怖かったのはテンプの取り扱いです。
何と、ヒゲ棒の外側にガードが付いていないんです。
ヒゲゼンマイの外端が、華奢な0.2mm程度の真鍮のヒゲ棒で守られているだけという恐ろしい構造をしていまして、テンプの取り扱いには常に恐怖感が伴いました。
(いつもテンプやアンクルの取り扱いは恐ろしいですが、いつも以上の恐怖でした笑)

ヒゲ棒を触ると折ってしまうんでは無いかという恐怖感が未だに取れません。
学生の頃、何本と折って来た事か…(笑)

まだまだ僕も甘いですね。
これからも色んな時計を触って、勉強して行かなくては。イメージ 1

facebook始めました。

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私事ではございますが、facebookを始める事にしました。
yahooブログはアップロードにかなり手間がかかってしまうので、、

facebookではタイムリーに、プライベートでの時計修理の事や、その他色々グダグダと日々の事を書き連ねて行こうかと思っています。
時計以外のネタも多そうですが…

興味が有ったらご連絡いただければと思います。
ではでは~

爪石調整とは

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facebookで友人相手にこんな記事あげると、誰も付いて来てくれないと思うので、この記事は備忘録としてブログに書いておこうかと思います。

写真は先日会社の先輩よりお預かりした、セイコーマーベルのアンクルの写真です。
この時計、アンクル出爪の停止量が大きいため、調整を施す事にしました。

そもそも爪石の停止量ってのは、
第一停止は爪石衝撃面の幅の2/10程度、第二停止はその半分で、総停止量は3/10程度って言うのがテキスト上の理想値とされています。

※用語解説
衝撃面とは…
端的に言うと、爪石のルビーの長方形の短辺のこと
停止面とは…
端的に言うと、爪石のルビーの長方形の長辺のこと
第一停止とは…
入爪もしくは出爪、いずれかの爪からすっぽ抜けたガンギ車が、もう一方の爪石の停止面に接触する瞬間に当たる場所の事
第二停止とは…
第一停止の位置からガンギ車がゼンマイの力で回転し、引きの作用でさらに食い込んで行く事によって、アンクルとドテピンが接触し、アンクルの運動が停止した場所の事
総停止量とは…
第一停止と第二停止の和のこと

総停止の位置ではゼンマイがアンクルを押す力(引きの作用)やアンクル剣先と振り座の安全作用により、時計の針が進む事は有りません。
これを解除するにはテンプの振り石が戻って来て、アンクルを押し上げてやる必要が有ります。
つまり、総停止量が大きくなればなるほど、テンプがアンクルを戻すのに必要なエネルギーが大きくなり、テンプの運動エネルギーの損失が大きくなる=振り角低下=等時性の悪化に繋がるのです。
つまり、これは時計の精度にダイレクトに影響を与えますので、小さいにこした事は有りません。

ですが、第一停止、第二停止とも必要悪として存在しています。

第一停止はガンギ車の工作精度、およびアンクルのハコ、テンプの振り石のクリアランスの関係上存在します。
これが全くないと、ガンギの歯の寸法がばらついていた時に、第一停止の時にアンクルの衝撃面に爪石が当たってしまう、衝撃面停止という状態が発生します。
衝撃面停止…
衝撃面にガンギの歯が当たると、アンクルを押し上げようという作用が働きますが、テンプはアンクルを停止させようと、逆の方向に動いています。結果としてはアンクルはテンプの力に負け、押し上げられて停止位置に落ち着く訳ですが、テンプの運動エネルギーを大きく損なう事になります。

ガンギの工作精度以外にも、第一停止の状態で何らかの外的衝撃を受けると、アンクルのハコとテンプの振り石のクリアランスの関係で、衝撃面にガンギが移動してしまう事があり、このガタの事をハコ先あがきといい、第一停止量からハコ先あがきを引いた残りを停止安全量と言います。
第一停止はこの停止安全量が確保され、かつガンギの歯の加工精度のバラツキをカバー出来る範囲に調整されてあるのが理想と言われています。

第二停止は、第一停止の状態から、アンクルがガンギに押されて回転し、アンクルがドテピンや受けドテに止められるまでの量です。
第二停止の位置で何らかの外的衝撃を受けると、テンプの振り石のお腹の部分にアンクルのクワガタ(先端の開いている部分)が接触し、ガンギの衝撃面への落下を防ぎます。
この時のアンクルの可動範囲のガタの事をクワガタあがきと呼びます。
第二停止を過ぎて自由振動に入ると剣先、小ツバの作用によって振り切りや衝撃面落下を防ぎます(剣先あがき)。


実際の所、ガンギ車等の脱心機は工作精度が高いため、第一停止の量は衝撃面の2/10未満に調整されている物が多く、停止安全量まで考慮された物は少ないのではないかと思います。
停止安全量を確保しなくてはいけない時間は本当に極めて短時間であり、かつ、その時間も引きの作用によって、衝撃面ではなく停止面の方向に向かうように力が作用している事が理由であると考えています。
実際にETAのクロノメーター級の精度が出せる時計も、出荷時には停止安全量までは考慮されておらず、ギリギリで衝撃面停止を起こさない位置に調整されています(爪石幅の1/10程度の物が多かったです)。

受けドテ型の時計では、第二停止だけの直接操作は基本的には出来ません。
第二停止は爪石の食い合いを調整する事によって第一停止と総停止量を調整する事で、間接的に調整します。
例えば入爪の食い合いを浅くすると、入爪は総停止、第一停止いずれも小さくなります。第二停止量は変わりません。
この時、入爪の食い合いが小さくなると、ガンギ車は出爪への落下が早くなり、出爪の第一停止も小さくなります。
出爪の総停止量は変わらないので、出爪の第二停止量は増加することになります。
第一停止を詰めれば詰める程、相対的に未調整の爪石の方の第二停止が大きくなります。
この特性をふまえた上で、両方の爪石の第一停止、第二停止の量をちょうど良い案配にしてやります。
このバランスを入爪、出爪で均等にする事をアンクルの中心出しと言ったりもするようです。

近年の時計は前述の通り第一停止が小さく設定されている物が多いため、第一停止と第二停止はほぼ等量、もしくは第二停止の方が若干大きい時計が多いように思います。

とまぁ、長くなってしまいましたが、爪石調整の基礎はこんな所だったと思います。

この辺りの調整は目には見えない所ではありますが、誤作動防止と等時性確保のため、適切な調整が求められる所です。
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入院患者

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新しい入院患者が入りました。

機械式時計の入門機、セイコー5シリーズです。

7S26と言う機械を使っているのですが、手巻き機能を追加したいと言う事で、上位機種の6R15を搭載した時計を用意し、二個イチします。
6Rの方はローターに仕上げが施してあったり、ブリッジが多少キレイだったりします。
楽しみながらノンビリやります!
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7S→6Rコンバート その1

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今日からお仕事です。

昨日は肩ならしという訳でもないけど、セイコーの分解、比較をしてみました。
写真上、黒い枠が付いてるのが上位機種です。巻真の刺さる所の上面あたりに、後付けで早送りのための機構が追加されているのがわかります。

通常、巻真部分に刺さっている歯車はツヅミ車、キチ車の二種類なんですが、こいつは早送り車とでも呼びましょうか。そんなのがくっついています。

なんでこんな構造になったのか?
まだ全バラにはしていないので推測の域をでませんが、元々7S系には手巻きの機構が組み込まれていません。
上位機種の6Rでは手巻き機構を追加したため、7Sのツヅミとキチの動作だけではまかない切れず、後付けの早送り車に早送り機能を持たせ、ツヅミとキチに手巻きと針合わせの機能を割り当てたんではないかと思います。

あまりにも見た目の構造が違うので一瞬ヒヤッとしましたが、7S用の筒車とカレンダー抑え、曜修正車の移植で問題なく曜日機能を取付けることが出来そうです。


続きは来週か、週末あたりにやろうかなと思ってます。
イメージ 1

7S→6Rコンバート その2

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さー随分日が空いてしまいましたが、残業が無かったので続きを少々進めました。

流石に上位機種。仕上げだけでなく色々な所が凝っています。
これは6R15のテンプです。
7Sの物と比べて調整が良く出来るように、エタクロン式のヒゲ持ち、緩急針が搭載されています。

その名のとおり、スイスETA社の特許技術でしたが、特許期間が終了したので、色々な会社の機械に採用されています。
外端カーブの微調整やアオリ調整による等時性カーブのコントロールが容易に行なえます。

イメージ 1


こちらは7Sの物です。
オーソドックスなスタッドによる固定、ヒゲ棒による緩急です。
イメージ 2

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先日2月の13日の自由登校日を持ちまして、全過程を無事に終了することが出来ました。

僕の学んでいたコースは3年制で、クロノグラフを専攻する(ウォッチメーカーマスターコース)というコースになります。このコースは卒業前に、マスター認定試験と呼ばれる試験を開催します。
試験内容は
ETA7751のオーバーホール
ETA955のオーバーホール
I記試験
の3つです。筆記2時間、実技10時間の二日間の試験になります。
時計には不具合がつけられており、それらを決められた時間内で如何に修理できるかがポイントになります。(具体的にはひげゼンマイの外端カーブ、爪石の停止量、各部のアガキなどを10箇所程度狂わせてあります。)

各科目70点以上で合格し、1位の学生には何とHORIAの穴石調整器をプレゼント!!
という非常に太っ腹な試験でした。

結果は、1位と2位のデッドヒートだったようです。
僕はと言いますと、合計得点272点!!で惜しくも2位。2点差でHORIAを逃してしまいました(T_T)
全力で努力したつもりですが、1位の人に得意分野の筆記で11点差をつけられてしまった為、敢え無く敗退・・という結果でした。
常々一方的にライバル視していた友人に、最後に負けたのは悔しくもあり、しかしながら実力で見ると彼に部があったのは事実です。(先生より学内一の腕と言われていました)
そんな彼に僅差だった事、むしろ実技では9点勝ったという事を嬉しくも思います。

こういった形で戦う事は今後ありませんが、これからも良きライバルとして意識しあえていければと考えています。

4月からは某スイスメーカーの国内拠点で修理を一から学びます。
環境的に温い部分もあるため、覇気を失う事無く日々精進したいと思っています。
今後とも応援よろしくお願いします!

考察 ランデロンのクロノグラフ「cal.51」について

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こんにちは。久々の更新です。
通勤時間が往復4時間もあるので、ネタはちょこちょこ上がってます(笑)
ボチボチ更新していきますのでよろしくお願いします。

先日無銘のスイス製手巻きクロノを入手しました。
年代は1940年代と古いですが、珍しくスクリューバックで耐震装置もあり、実用性はバッチリです。
搭載されているムーブメントはランデロンの51という機械です。ランデロン社はエボーシュSAの廉価クロノを生産していたメーカーで、フォンテンメロンの支社ということです。
市場では安物と言われ低く見られていますが、実際の所はどうなのでしょうか。いままで僕が扱ってきたスイス製クロノグラフ(Lemania1873、Valjoux7750、Valjoux7733)と比較してみました。

1.ベースムーブメントの比較
ランデロン51
手巻き/18000振動/チラテンプ/スチールヒゲ
微動緩急なし/耐震装置あり
*チラテンプを採用しクラシカルなデザインだが、鉄ヒゲ+微動緩急の無いテンプに加え、アンクル停止量も大きいため脱進機のスペックは現行品と比べてしまうと今ひとつ。
ただし香箱がムーブメントからはみ出るほど大きく、ぜんまいトルクが大きいためテンプの振りは良好で姿勢差も実用に堪えるレベルだった。
また後期モデルには耐震装置を採用。華奢なアンクルとクリアサファイアの爪石はアンティークならではの美しさ。耐震受石の内側に拡散防止の切れ込みが入ってる所も古い時計ならではの特徴で、手が込んでいる。
スチールひげに加えてテンプも温度補正機能のない通常品であるため温度変化には弱い。
人気が無く安価なので新品の部品供給は無くともジャンクからの部品回収で維持できると推測。
☆精度=C

オメガ861
手巻き/18000振動/スムーステンプ/ニヴァロックスヒゲ
微動緩急あり/耐震装置あり
*基本設計は321からの古いもので、低振動ではあるが恒弾性ヒゲの採用、微動緩急機構などで十分な精度が出せる。
2レジスターモデルとの部品共通化が図られた汎用性の高いムーブメント。現行品ではあるが部品価格が高く、ランニングコストが高くつくのが難点。
スムーステンプのためデザインは今ひとつで、赤銅メッキ+チラテンプ採用の前身モデル321と比べると見劣り感は否めない。
☆精度=A

7750
自動巻/28800振動/スムーステンプ/ニヴァロックスヒゲ
微動緩急あり/耐震装置あり
*8振動と大トルクのゼンマイ、エタクロン機構の採用(アオリの微調整機構)、恒弾性ひげ、ベリリウム合金テンプの採用でクロノメーター級の精度も容易に出せる。モジュール付加によりいろいろな機能を追加したり、レイアウトを変更できる汎用性の高い優れたムーブメント。大量に流通しており部品の入手も容易。工業製品として非常に優れている。ブリッジは一体型でデザインは美しいとは言い難い。
☆精度=S

ロシア版7733コピー
手巻/21600振動/スムーステンプ/ニヴァロックス?ヒゲ
微動緩急なし/耐震装置あり
ヴィーナスの廉価版188をさらにコストダウンさせる目的で開発された7733のさらにコピー品。金型はヴァルジュー社からの払い下げとの噂だが、仕上げ、品質ともに良好とは言い難い。得に酷いのはシムを用いたテンプのアガキ調整。
通常テンプの縦アガキは穴石調整器を用いて耐震装置の高さを変えて行うべきであるが、この機械は薄いプレート(シム)をテンプ受けの下に数枚挟むことで高さをコントロールしている。また耐震装置はロシアオリジナルで、部品を紛失するとスイス製品は流用できない。
各部の調整もいまひとつで、固体によっては姿勢差が大きく出てしまい、調整できないものも(アオリをいくら詰めても平縦の平均歩度の差が20秒以上あったりする=脱進機誤差が非常に大きい)。
☆精度=E

2.クロノグラフ部分の比較

ランデロン51
カム方式/キャリングアーム採用/スライディングギア採用
*安物と言われるランデロンではあるが、キャリングアームとスライディングギア(独立していてリセット時等に稼動するクロノ中間車)を採用した本格的な構造。51はランデロンの中ではハイグレードなモデルらしく、線ばねの採用はわずか2箇所に留まり、ほとんどの部品が板材削りだしバネを使用。クロノブリッジはベーシックな形状で美しい。ハンマーもランデロン48系やヴィーナス188などの厳ついデザイン(仲間内ではイカと呼んでます)とは異なり、普通の形状のハンマーがカムの上に直接取り付けられている。カム式ランデロンの中では一番カッコいいハンマー。ハンマースプリングを持たない構造によりプッシュボタンの操作が比較的軽いため、カム式ながら操作感は軽快。マイナスポイントとしては操作が通常のクロノグラフとは異なる点(上ボタンがスタート、下がストップ&リセット)、ストップ時にクロノ輪列を止めておくブレーキ機構が無い点、ハンマーの下に入るので目立たないがカムの形状、一部レバー類が削り出しではあるがイマイチ安っぽい点が挙げられる。
☆機能=C 外観=B 操作感=B

オメガ861
カム方式/CA採用/スライディングギア不採用
*申し分ない構造。カム回りもピラー式の321からの進化のため、すっきりとして美しいカム形状をしている。キャリングアームやレバー類は流石しっかりとした作りをしている。
難点は以下。
スライディングギアがなく、クロノ中間車はブリッジの下に隠れてしまっている。おかげでクロノブリッジの形状もなんだか野暮ったい。
スタート時にはジャンパーで規正されたリセットハンマーを押し戻すため強い力が必要となり、クリック感はやや強い。
ねじの種類がやたらと多い。
ブレーキ機構もついているが、プラスティック製でデザイン面ではマイナスである(シースルー用に金属製もあり)。
☆機能=A 外観=B 操作感=B

7750
カム方式/スイングピニオン/スライディングギア不採用
*低コストなスイングピニオン方式を採用。針飛びも少なく確実で安定した動作をする。難点を挙げると主にデザイン面である。ミニッツジャンパーやフィンガー、クラッチスプリング等多くのパーツに安価なバネを使っている所が悲しい。またブリッジは直線的で、カム形状も味気ない。機構面では巻き上げ機構に不具合を起こすものが多く、切替車や角穴駆動車の破損が度々見られる。ローターが重いため、ベアリングも衝撃等によりダメージを受けやすい。
クロノスタート時に非常に固いハンマースプリングを持ち上げなくてはならず、また12時間積算計のリセットもプッシャーを押す力に依存しており(調整は可能だが)、操作感はいまひとつ。
☆機能=A 外観=D 操作感=C

7733コピー
カム方式/CA採用/スライディングギア採用
*後期のカム方式クロノグラフに見られる、カムと一体化したハンマー(イカ)のデザインが強烈。個人的には美しいという評価は出来ない。
また、175ベースとはいえ当時の面影を残す部品はほとんど無く、ブリッジは直線的で味気ない。
スライディングギアを採用しているのだが、スライディングギア自体のつくりが安っぽい。
キャリングアームは上下とも受け石を採用した高級品。
本家7733とは仕上げの美しさが異なる。廉価品とは言え7733もブリッジの仕上げは施されているが、中国やロシアの時計は削りっぱなしの上からロジウムめっきをかけており、瞬間に安っぽさが伝わってしまう。なぜか操作感も本物とは違い、非常に硬い印象を受ける。
☆機能=B 外観=D 操作感=C



まとめ・・・
主観的な考察ではありますが、ランデロンは名機1873には及ばずとも、実用もでき、絵的にも[見れる]ムーブメントであると結論づけます。
僕のランデロンは裏ブタを手締めしていて、いつでもムーブメントを眺めることが出来る仕様にしています(笑)
操作感もそこそこ気持ち良く、オーバーホールした直後の精度も日差+5秒と非常に良い結果を出しており、一年間断続的に使用しましたが、現状+10秒程度かと思われます。)

競合するカム式オールドクロノであるValjoux92やVenus140(線バネ多数+スイングピニオン方式で見栄えがイマイチ)、Venus188やValjoux7733(カム一体型のハンマーが異常に大きい&ブリッジが簡略化されて直線的)と比べると、ブランド名でこそ劣りますが、デザインやコストパフォーマンスを考慮すると十二分に良好なムーブメントと言えるでしょう。
また、手巻きクロノというジャンルは自動巻きクロノとは優劣のポイントが全く事なり、同じクロノグラフというくくりではありますが、方向性は全く異なる事が興味深いです。

ピラー式のムーブメントになると価格が一気に跳ね上がるため、カム式で手巻きクロノを探している方は一つぐらい持っていても良いかも知れません。
話は逸れますが、チャイナのVenus175コピー品、見た目はともかく操作性、精度は非常に高く、これも一本コレクションに入れても良いかと思います。追々購入して分解し、構造、調整レポートをお送りしようかと考えていますので気長にお待ちください。

長くなってしまいましたが、今日はこんな所で。

復活!天文台コンクール

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こんばんは。

またまた久しぶりの更新でスイマセン。

さて、今日は今号のクロノス日本語版からのピックアップです。
なんと今年、天文台コンクールと呼ばれる伝説の時計コンペディションが復活しました!!

時計ファンの皆様でしたらご存知のこととは思いますが、天文台コンクールと言うのは、平たく言いますと時計の精度を競う競争です。1945年からメーカーの威信を賭けた戦いが繰り返されていましたが、1975年のコンクールを最後に中止されてしまいました。
理由はクォーツ腕時計の誕生による精度競争の終焉、日本のメーカーによる上位独占が主な原因ではないかといわれていますが他にも色々な事情があったのかも知れません。
今回の復活は、ある時計博物館の50周年を記念するイベントとして開催されるもので、各メーカーのスーパーマシンが投入され、その精度を競い合います。


僕が個人的に好きなJL社も今回の大会に参加します。
流石といいますか、今大会にもマニア垂涎の超絶マシンを投入してきました。
ひとつ目はトゥールビヨン。トゥールビヨンについての詳しい説明は不要かと思いますが、従来のトゥールビヨンは、姿勢差を解消するために搭載された「キャリッジ」の駆動にぜんまいのトルクを多く取られてしまうため、実際のところその精度は通常の時計に劣るものとされています。
実際、かつての天文台コンクールでもトゥールビヨンが上位にランクインする事はほとんど無かったようです。
しかしJLはトゥールビヨンに最先端素材・技術を投入し、超軽量キャリッジを採用。テンワ直径も通常の比ではない大径テンワを採用し、お飾りのトゥールビヨンではなく、精度追求のための機構として、トゥールビヨンが本来あるべき姿を追求しました。

そして二つ目がこれまたトゥールビヨンなんですが、これは所謂3次元トゥールビヨンで、大型テンプ・軽量キャリッジ採用はもちろんのこと、キャリッジの回転速度の適正化に加え、平置きのデテント脱進機などに搭載される「ちょうちんヒゲ」と呼ばれる等時性に優れたヒゲぜんまいを搭載しました。
このヒゲは、高精度の腕時計に採用されている「ブレゲの巻き上げヒゲ」と同じく、ヒゲの収縮運動を綺麗な真円に近付けるためのものですが、何重にもヒゲを巻き上げるため、縦方向に大きくスペースを確保する必要があり、通常の腕時計には用いられていませんでした。
平置きデテントでは抜群の性能を誇るようですが、何しろ腕時計では前代未聞の挑戦です。
どのような精度が出るのか非常に楽しみな一台です。

余談ではありますが、今回のコンクールに投入されるトゥールビヨンのベース機は、ポインターデイト・セカンドタイムゾーン表示機能付で693万円と非常に良心的な価格設定です。
まぁ、もちろん買えませんけどね(笑)


三大ブランドとして超有名なAP社も今回の大会に参加します。
こちらも投入された時計はただ事ではすみません。
テンプ拘束角が小さく、精度に優れたデテント脱進機という機構がありまして、古くから海洋時計にはよく用いられてきました。デテントは精度には優れるのですが(月差レベルの精度)、振動に弱いため腕時計に用いられることはありませんでした。
APがデテント脱進機をベースに耐衝撃性を向上させて開発した「AP脱進機」。市販のAP脱進機搭載機に大改造を施したマシンが今回のコンペに参戦します。
耐衝撃性を考慮し振動数は12振動、ヒゲぜんまいの収縮を限りなく均等にしようと2枚の相反するヒゲぜんまいを搭載!聞いているだけで驚愕のスペックです。
ちなみにこちら、ベースウォッチのお値段は約2800万円也。僕の年収何年分なんでしょうねぇ(笑)


まさに「天文台コンクールは時計界のF1」とは言ったもので、上記の他にも、予算度外視の色々なメーカーの非常に興味深い時計たちが並びます。
詳しくは今号のクロノスを買ってご覧ください!!

ETA7750のはなし

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非常にどうでも良い話なんですけど、以前友人に買い取ってもらったジャンク上がりのスピードマスター(トリプルカレンダー ETA7750ベースの7751搭載)が調子悪くなってしまいまして、先週以前のバイト先にお邪魔して、オーバーホールを行いました。

原因は爪石の欠落と、アンクルホゾの汚れによる振り落ちだったんですが、クロノを動かすと止まっちゃうほどに弱ってまして・・
オーバーホール後は振り角が180度から290度と大幅に改善!!新品レベルの元気な時計になりました!いやーホントに精度も振りも出やすい良い機械です。

友人の機械はかなり古いものでして、結構現行型と違う部品があったので、メモ程度の話ではありますが、新旧の比較にでもしてもらえたらと思います。

�輪列
・3番車の軸受けが地板側だけメタルブッシュ。
トルクが大きい機械ゆえ、ブッシュの摩耗が激しく、なぜここにメタルブッシュが採用されたのか疑問に思った。
今回の修理の際に、部品取りの機械から移植してルビーの受石に変更。ザラ回りがスムーズになった。

�クロノパーツ
・30分積算計の軸受けもメタル。あまり大きな力はかからないので摩耗もなく、そのまま使用した。
・裏輪列側の12時間カウンターのブレーキパーツの先端形状が現行と旧型で違うらしい。部品がなかったのでここはそのまま再使用。次回オーバーホール時に交換予定。

�その他
・エボーシュの刻印が「ETA」ではなく「VAL」だった。valjoux時代の名残ですね。
・アンクル爪石が不透明。今回は欠けていたため現行品の爪石に変更した。
・自動巻きの切替車の上下ホゾもメタル。摩耗が起きやすい部位だが、巻き上げは正常だったため今回はそのまま使用。次回要交換か??
・ETA特有のアオリ調整システム(ETAクロン)が実装されていない。等時性の調整が若干手間。

他にも探せばいろんな変更があるかもしれません、
30年以上使われている機械ですので、少しずつ進化してメンテナンス性を向上させてるみたいですね。
ホントにメモみたいな話で申し訳ないです(汗)
中古の7750を買うときのチェックポイントとして利用してもらえれば幸いです。
まぁ、古いからといって全然問題があるわけではないので、あくまで参考程度に。

近況

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久しぶりの更新です。
こんなブログにもちょくちょくコメントをくださる方がいらっしゃるので、たまには更新しなくては!
と思いまして(笑)


僕は業界内では「分業」で有名な、とあるブランドで働いています。
分業なので、自分が請け負う部分についての知識や技術は深まるのですが、他の部分が全くのびておらず、その点では学生時代の同級生にみるみる差を付けられているのではないかと思います。

憧れの「1個修理」になれるまでの道程はまだまだ当分長いようです(TT)

ですが、僕も腐っちゃいませんよ!
時計専門誌を読んで最近の事も勉強し、友人からオーバーホールの依頼を受けては、プライベートでもオーバーホールを行なっています。
(自宅にもある程度の工具や測定器は揃えてますが、どうにも出来ない部分は学生時代にお世話になった時計店の大先輩に助けてもらっています…)
とは言え、仕事終わりや手空きの週末などにしか行えないので、せいぜい数ヶ月に1本ってところです。
こんな調子ではマズいな~とは思うのですが、何もしないよりはマシかと。
ノルマが無いため、ゆっくり時間をかけて、丁寧に整備が出来るので気楽と言えば気楽なのかも知れません。

この写真の時計は最近直した、ロンジンの6651?というキャリバーです。
秒カナ式両方向自動巻の時計で、時計学校時代のジュエリー科の友人のお父様のものです。
自動巻機構の油の劣化が原因で、巻き上げが重くなってしまっていたようです。

かなり大掛かりな自動巻機構を搭載していましたが、8振動で最大姿勢差も10秒以内、微動緩急機構を備えた良く出来た構造の時計でした。

カレンダー機構がなかなかの曲者でして、デイトジャスト機構を搭載しているのですが、位置決め用のバネの強度と、日送り爪のバネの強度のバランスが悪いと、ちゃんとカレンダー機構が動かないんです。注油もシビアで、なかなかてこずりました。

カレンダーも曲者でしたが、この時計を触るときに最も怖かったのはテンプの取り扱いです。
何と、ヒゲ棒の外側にガードが付いていないんです。
ヒゲゼンマイの外端が、華奢な0.2mm程度の真鍮のヒゲ棒で守られているだけという恐ろしい構造をしていまして、テンプの取り扱いには常に恐怖感が伴いました。
(いつもテンプやアンクルの取り扱いは恐ろしいですが、いつも以上の恐怖でした笑)

ヒゲ棒を触ると折ってしまうんでは無いかという恐怖感が未だに取れません。
学生の頃、何本と折って来た事か…(笑)

まだまだ僕も甘いですね。
これからも色んな時計を触って、勉強して行かなくては。イメージ 1

facebook始めました。

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私事ではございますが、facebookを始める事にしました。
yahooブログはアップロードにかなり手間がかかってしまうので、、

facebookではタイムリーに、プライベートでの時計修理の事や、その他色々グダグダと日々の事を書き連ねて行こうかと思っています。
時計以外のネタも多そうですが…

興味が有ったらご連絡いただければと思います。
ではでは~

爪石調整とは

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facebookで友人相手にこんな記事あげると、誰も付いて来てくれないと思うので、この記事は備忘録としてブログに書いておこうかと思います。

写真は先日会社の先輩よりお預かりした、セイコーマーベルのアンクルの写真です。
この時計、アンクル出爪の停止量が大きいため、調整を施す事にしました。

そもそも爪石の停止量ってのは、
第一停止は爪石衝撃面の幅の2/10程度、第二停止はその半分で、総停止量は3/10程度って言うのがテキスト上の理想値とされています。

※用語解説
衝撃面とは…
端的に言うと、爪石のルビーの長方形の短辺のこと
停止面とは…
端的に言うと、爪石のルビーの長方形の長辺のこと
第一停止とは…
入爪もしくは出爪、いずれかの爪からすっぽ抜けたガンギ車が、もう一方の爪石の停止面に接触する瞬間に当たる場所の事
第二停止とは…
第一停止の位置からガンギ車がゼンマイの力で回転し、引きの作用でさらに食い込んで行く事によって、アンクルとドテピンが接触し、アンクルの運動が停止した場所の事
総停止量とは…
第一停止と第二停止の和のこと

総停止の位置ではゼンマイがアンクルを押す力(引きの作用)やアンクル剣先と振り座の安全作用により、時計の針が進む事は有りません。
これを解除するにはテンプの振り石が戻って来て、アンクルを押し上げてやる必要が有ります。
つまり、総停止量が大きくなればなるほど、テンプがアンクルを戻すのに必要なエネルギーが大きくなり、テンプの運動エネルギーの損失が大きくなる=振り角低下=等時性の悪化に繋がるのです。
つまり、これは時計の精度にダイレクトに影響を与えますので、小さいにこした事は有りません。

ですが、第一停止、第二停止とも必要悪として存在しています。

第一停止はガンギ車の工作精度、およびアンクルのハコ、テンプの振り石のクリアランスの関係上存在します。
これが全くないと、ガンギの歯の寸法がばらついていた時に、第一停止の時にアンクルの衝撃面に爪石が当たってしまう、衝撃面停止という状態が発生します。
衝撃面停止…
衝撃面にガンギの歯が当たると、アンクルを押し上げようという作用が働きますが、テンプはアンクルを停止させようと、逆の方向に動いています。結果としてはアンクルはテンプの力に負け、押し上げられて停止位置に落ち着く訳ですが、テンプの運動エネルギーを大きく損なう事になります。

ガンギの工作精度以外にも、第一停止の状態で何らかの外的衝撃を受けると、アンクルのハコとテンプの振り石のクリアランスの関係で、衝撃面にガンギが移動してしまう事があり、このガタの事をハコ先あがきといい、第一停止量からハコ先あがきを引いた残りを停止安全量と言います。
第一停止はこの停止安全量が確保され、かつガンギの歯の加工精度のバラツキをカバー出来る範囲に調整されてあるのが理想と言われています。

第二停止は、第一停止の状態から、アンクルがガンギに押されて回転し、アンクルがドテピンや受けドテに止められるまでの量です。
第二停止の位置で何らかの外的衝撃を受けると、テンプの振り石のお腹の部分にアンクルのクワガタ(先端の開いている部分)が接触し、ガンギの衝撃面への落下を防ぎます。
この時のアンクルの可動範囲のガタの事をクワガタあがきと呼びます。
第二停止を過ぎて自由振動に入ると剣先、小ツバの作用によって振り切りや衝撃面落下を防ぎます(剣先あがき)。


実際の所、ガンギ車等の脱心機は工作精度が高いため、第一停止の量は衝撃面の2/10未満に調整されている物が多く、停止安全量まで考慮された物は少ないのではないかと思います。
停止安全量を確保しなくてはいけない時間は本当に極めて短時間であり、かつ、その時間も引きの作用によって、衝撃面ではなく停止面の方向に向かうように力が作用している事が理由であると考えています。
実際にETAのクロノメーター級の精度が出せる時計も、出荷時には停止安全量までは考慮されておらず、ギリギリで衝撃面停止を起こさない位置に調整されています(爪石幅の1/10程度の物が多かったです)。

受けドテ型の時計では、第二停止だけの直接操作は基本的には出来ません。
第二停止は爪石の食い合いを調整する事によって第一停止と総停止量を調整する事で、間接的に調整します。
例えば入爪の食い合いを浅くすると、入爪は総停止、第一停止いずれも小さくなります。第二停止量は変わりません。
この時、入爪の食い合いが小さくなると、ガンギ車は出爪への落下が早くなり、出爪の第一停止も小さくなります。
出爪の総停止量は変わらないので、出爪の第二停止量は増加することになります。
第一停止を詰めれば詰める程、相対的に未調整の爪石の方の第二停止が大きくなります。
この特性をふまえた上で、両方の爪石の第一停止、第二停止の量をちょうど良い案配にしてやります。
このバランスを入爪、出爪で均等にする事をアンクルの中心出しと言ったりもするようです。

近年の時計は前述の通り第一停止が小さく設定されている物が多いため、第一停止と第二停止はほぼ等量、もしくは第二停止の方が若干大きい時計が多いように思います。

とまぁ、長くなってしまいましたが、爪石調整の基礎はこんな所だったと思います。

この辺りの調整は目には見えない所ではありますが、誤作動防止と等時性確保のため、適切な調整が求められる所です。
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入院患者

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新しい入院患者が入りました。

機械式時計の入門機、セイコー5シリーズです。

7S26と言う機械を使っているのですが、手巻き機能を追加したいと言う事で、上位機種の6R15を搭載した時計を用意し、二個イチします。
6Rの方はローターに仕上げが施してあったり、ブリッジが多少キレイだったりします。
楽しみながらノンビリやります!
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7S→6Rコンバート その1

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今日からお仕事です。

昨日は肩ならしという訳でもないけど、セイコーの分解、比較をしてみました。
写真上、黒い枠が付いてるのが上位機種です。巻真の刺さる所の上面あたりに、後付けで早送りのための機構が追加されているのがわかります。

通常、巻真部分に刺さっている歯車はツヅミ車、キチ車の二種類なんですが、こいつは早送り車とでも呼びましょうか。そんなのがくっついています。

なんでこんな構造になったのか?
まだ全バラにはしていないので推測の域をでませんが、元々7S系には手巻きの機構が組み込まれていません。
上位機種の6Rでは手巻き機構を追加したため、7Sのツヅミとキチの動作だけではまかない切れず、後付けの早送り車に早送り機能を持たせ、ツヅミとキチに手巻きと針合わせの機能を割り当てたんではないかと思います。

あまりにも見た目の構造が違うので一瞬ヒヤッとしましたが、7S用の筒車とカレンダー抑え、曜修正車の移植で問題なく曜日機能を取付けることが出来そうです。


続きは来週か、週末あたりにやろうかなと思ってます。
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7S→6Rコンバート その2

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さー随分日が空いてしまいましたが、残業が無かったので続きを少々進めました。

流石に上位機種。仕上げだけでなく色々な所が凝っています。
これは6R15のテンプです。
7Sの物と比べて調整が良く出来るように、エタクロン式のヒゲ持ち、緩急針が搭載されています。

その名のとおり、スイスETA社の特許技術でしたが、特許期間が終了したので、色々な会社の機械に採用されています。
外端カーブの微調整やアオリ調整による等時性カーブのコントロールが容易に行なえます。

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こちらは7Sの物です。
オーソドックスなスタッドによる固定、ヒゲ棒による緩急です。
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